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COLUMN

セレクションで「修正できる子」が残る|コーチの一言を次のプレーで変える力の育て方

セレクション中にコーチの助言を聞く小学生

セレクションの会場では、プレーの合間にコーチが受験者へ声をかける場面があります。「もっと早く前を向いて」「受ける前に周りを見よう」「ボールを取られたら、すぐ切り替えて」。短い一言ですが、そのあとのプレーが変わる子と、変わらない子がいます。

指導の現場でよく言われるのが、「言われたことを、次のプレーで直せるかどうか」は、その子がこれから伸びるかどうかを考えるうえで大事な手がかりになる、ということです。今できることだけでなく、教えたことを吸収して変われるかどうか。クラブが数年かけて選手を育てる以上、ここを見ようとするのは自然なことです。

この記事で書いていることを、お子さんの状況に当てはめて聞くこともできます。LINEでは代表の桂陸人が直接お答えしています。
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当日以外の準備も含めた全体像は、「セレクションに受かる子と落ちる子の違い|当日の数時間ではなく、それまでの1年で差がつくもの」で整理しています。

この記事では、この「修正力」がどんな力なのか、なぜ差がつくのか、そして家庭でどう育てていけるのかを整理します。



修正力とは何か


「わかった」と「できた」の間にあるもの

コーチに何かを言われたとき、子どもの中では次のような段階があります。

1つ目は、言われた内容を理解すること。2つ目は、自分の今のプレーと、言われたプレーの違いに気づくこと。3つ目は、次の場面で実際に変えてみること。4つ目は、変えてみた結果がどうだったかを感じ取ること。

修正力とは、この4つを短い時間で回す力だと言えます。多くの子は1つ目の「わかった」で止まります。返事は「はい」と元気でも、次のプレーで何をどう変えるのかが自分の中で具体的になっていないため、同じプレーを繰り返してしまいます。


修正力は性格ではなく、技術に近い

「うちの子は素直じゃないから」「人の話を聞かないから」と性格の問題として捉えられがちですが、修正力は練習で伸ばせる力です。ボールを止める、蹴るといった技術と同じように、回数を重ねるほど速く、正確になっていきます。

逆に言えば、普段の練習や試合で「言われたことを直す」経験が少ない子は、セレクションの本番でいきなり修正しようとしても難しいということです。



なぜ「直せない子」が生まれるのか


言われたことを自分の言葉に置き換えていない

「もっと周りを見て」と言われても、「周りを見る」とは具体的に何をすることなのかは、子どもによって受け取り方が違います。ボールを受ける前に首を振ることなのか、パスを出す前に顔を上げることなのか。自分の言葉に置き換えないまま「はい」と返事をすると、次のプレーで何を変えればよいのかが曖昧になります。


ミスの原因を「気持ち」で片づける習慣

ミスのあとに「集中していなかった」「次は頑張る」で終わるのが習慣になっていると、原因が具体的になりません。原因がぼんやりしていれば、直し方もぼんやりします。修正できる子は、「ボールを受けたときに体が正面を向いていたから、前に出せなかった」というように、原因をプレーの形で捉えています。


失敗したくない気持ちが強すぎる

セレクションのような緊張する場では、言われたことを試して失敗するのが怖くなります。いつものやり方に戻ってしまい、結果として「言われたことをやらなかった」ように見えてしまうことがあります。修正は、試してみなければ始まりません。試すこと自体を前向きに捉えられるかどうかも、大きな分かれ目です。



家庭でできる、修正力の育て方


1 練習から帰ったら「今日、何を言われた?」と聞く

まずは、コーチに言われたことを覚えているかどうかを確認します。最初は「覚えてない」「特に何も」という答えが多いかもしれません。それで構いません。聞かれ続けると、子どもは練習中から「あとで聞かれるかも」と意識するようになり、コーチの言葉を拾う回数が増えていきます。


2 「それって、具体的にどうすること?」と置き換えさせる

言われたことを覚えていたら、次は自分の言葉に置き換える練習です。「周りを見るって、具体的にはいつ、どこを見ること?」と聞いてみます。ここで親が正解を言う必要はありません。本人が「ボールが来る前に、後ろを1回見る」など、行動の形で言えれば十分です。


3 「次の練習で1つだけ試すこと」を決める

置き換えた内容の中から、次の練習で試すことを1つだけ決めます。たくさん決めると、どれも中途半端になります。1つに絞ることで、「試してみた」「できた・できなかった」がはっきりします。


4 結果を聞くときは、できたかどうかより「どうだったか」

次の練習後には「試してみてどうだった?」と聞きます。できなかったとしても責めないことが大切です。「やってみたけど、後ろを見ると前が見えなくなった」という答えが返ってきたら、それは立派な修正のプロセスです。次にどう工夫するかを、また本人に考えてもらえばよいのです。

この1から4を繰り返すことが、「言われる→置き換える→試す→振り返る」という修正の流れを、本人の中に習慣として定着させていきます。



親の声かけで気をつけたいこと


答えを先に言わない

修正力を育てるうえで、親がいちばんやってしまいがちなのが、子どもが考える前に答えを言ってしまうことです。「あそこは右に出せばよかったでしょ」と言われれば、子どもは「うん」と答えるしかありません。けれども、それは親の考えであって、本人が気づいたことではありません。自分で気づいたことは次のプレーで試しやすく、人から言われたことは、試合中には思い出しにくいものです。


修正できたことを具体的に認める

子どもが何かを変えてみたときは、結果がうまくいったかどうかにかかわらず、「言われたことを試してみたね」と具体的に認めることが大切です。「よかったね」だけでなく、「受ける前に後ろを見ていたね」と、変えた部分を言葉にして返すと、本人も自分が何を変えたのかをはっきり意識できます。この「変えたことに気づいてもらえる」経験が、次の修正への意欲につながります。


コーチの言葉と親の言葉をぶつけない

コーチに言われたことと、親が家で言うことが違うと、子どもは混乱します。プレーの中身について親の意見があったとしても、まずは「コーチは何と言っていた?」と聞き、本人がコーチの言葉をどう理解しているかを確かめることを優先します。家庭の役割は、プレーの正解を教えることではなく、本人が言われたことを整理し、試す後押しをすることだと考えると、関わり方がぶれにくくなります。



セレクション当日に修正力を出すために


会場で声をかけられたら、短く言い直す

当日、コーチに何か言われたら、心の中で「次は○○する」と短く言い直すように伝えておきます。普段の練習で置き換えの練習をしていれば、本番でもこの切り替えが速くなります。


同じミスを2回続けない、を目標にする

セレクションでミスをしない子はいません。大事なのは、同じミスを繰り返さないことです。「1回目のミスは仕方ない。2回目は変えてみる」という意識を持っておくと、ミスのあとも気持ちを切り替えやすくなります。ミスの直後にどう振る舞うかについては、「セレクションでミスをした直後の3秒|ここが評価の分かれ目になる」で詳しく書いています。


親は当日の声かけを増やしすぎない

当日の朝に、あれもこれもと注意点を伝えると、子どもの頭の中がいっぱいになり、会場でコーチの言葉を受け取る余裕がなくなります。家庭での準備は前日までに済ませ、当日は「言われたことを1つ試しておいで」くらいの声かけにとどめておくのがおすすめです。



試合映像を使った振り返り

試合を撮影できる環境があれば、映像を一緒に見るのも修正力を育てる良い方法です。プレー中は自分では気づけなかった体の向きや立ち位置が、映像で見るとはっきり分かることがあります。

このときも、親が「ここが悪い」と指摘するのではなく、「この場面、自分ではどう見える?」と本人に先に話してもらいます。本人が気づいた点を1つ選び、次の練習で試すことにつなげれば、映像が「怒られる道具」ではなく「直すための道具」になります。長い映像をすべて見る必要はありません。気になる場面を数か所だけ見るほうが、子どもも集中して振り返ることができます。振り返りを言葉にしていく具体的な方法は、「サッカーの言語化力を伸ばす振り返り方法|ミスの原因を自分で考えられるようになった事例」も参考にしてください。

「課題を見つけ、直し方を考え、試して、もう一度挑む」という流れは、子どもの練習だけの話ではありません。JFA(日本サッカー協会)も、世界大会の分析から課題を抽出し、解決のシナリオを作って育成や指導者養成に反映し、再び世界大会に挑むというサイクルで強化を進めていると説明しています(選手育成のコンセプト(JFA))。規模は違っても、修正力の考え方そのものです。



修正力は、セレクションのあとも効いてくる

修正力は、セレクションのためだけの力ではありません。入団後のチームでは、同じ年代の上手な選手が集まり、コーチから求められることも増えます。その中で伸びていくのは、言われたことを素早く自分のものにしていける選手です。

WiRM代表の桂陸人は、サンフレッチェ広島ユースで10番を背負い、世代別代表にも選ばれましたが、プロにはなれませんでした。自身のコラムの中で、その本質的な理由を「思考する」という行為を長くサボってきて、それに気づくのが遅すぎたことだと振り返っています。身体能力で通用していた時期が長かった分、頭を使ってプレーを変えていく習慣を身につけるのが遅れた、という趣旨です。修正力は、早いうちから習慣にしておくほど、年代が上がったときの支えになると私たちは考えています。



家庭だけで続けるのが難しいときの選択肢

「今日、何を言われた?」と毎日聞くのは、言葉にすると簡単ですが、実際に続けるのは大変です。親子だと、子どもが面倒がって答えなかったり、親のほうがつい答えを言ってしまったりすることもよくあります。

WiRMの「じりつLABO」では、子どもに必要な5つの力として、言語化力・自発力・習慣化力・修正力・逆算力を掲げ、それぞれをLv.1〜6で見える化しています。週1回のオンラインセッションでは、コーチと1対1でその週のプレーや振り返りを掘り下げ、毎日のTodoと週ごとのフィードバック、月1回の保護者面談を通じて、「振り返って、直して、また試す」流れを習慣にしていく取り組みをしています。家庭での声かけに限界を感じたときの選択肢のひとつとして、知っておいていただければと思います。



まとめ

・セレクションでは、コーチの一言を次のプレーで直せるかどうかが、伸びしろの手がかりとして見られることがある

・修正力は「理解する→違いに気づく→試す→結果を感じる」を短い時間で回す力で、練習で伸ばせる

・直せない原因は、言葉の置き換え不足、ミスを気持ちで片づける習慣、失敗への怖さにあることが多い

・家庭では「何を言われた?」「具体的には?」「1つだけ試すなら?」「どうだった?」の順で聞く

・当日は、言われたことを短く言い直し、同じミスを2回続けないことを目標にする


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記事に書けるのは、どのチームにも当てはまる話までです。実際に何が足りていて何が足りないのかは、お子さん一人ひとり違います。

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