セレクションに受かる子と落ちる子の違い|当日の数時間ではなく、それまでの1年で差がつくもの
セレクションの会場で同じピッチに立っている子どもたちは、外から見るとそれほど大きな差がないように見えることがあります。同じように走り、同じようにボールを追いかけている。それでも、数週間後に届く結果は分かれます。
「受かる子と落ちる子は、何が違うのか」。保護者の方がいちばん知りたいのは、おそらくこの問いだと思います。当日に見られるポイントについては、別のコラム「サッカーのセレクションに受かる子の特徴|見られるポイントと家庭の準備」で整理しました。この記事では視点を一歩手前に戻して、当日までの1年間の過ごし方に目を向けます。
この記事で書いていることを、お子さんの状況に当てはめて聞くこともできます。LINEでは代表の桂陸人が直接お答えしています。
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当日のプレーは、それまでの積み重ねが表に出たものです。差がつくのは数時間の選考の場ではなく、その前の日々の中だと私たちは考えています。
当日の差は、当日にはつくれない
セレクション当日にできることは、思っているより多くありません。前日に練習を詰め込んでも、急に技術が上がることはありませんし、緊張している中でいつもと違うことをしようとすると、かえって普段の力が出なくなります。
当日のプレーに表れるのは、ふだんの習慣です。ボールが来る前に周りを見る、ミスのあとすぐ切り替える、コーチの言葉を次のプレーで試してみる。どれも、会場に着いてから「やろう」と思ってできるものではなく、何か月もかけて体に染み込ませてきたものが自然に出てくるものです。
だからこそ、「受かる子」と「落ちる子」の違いを考えるとき、当日の数時間だけを見ても答えは見えにくいのです。
1年の過ごし方で分かれる5つのこと
ここからは、セレクションに向けた1年の中で差が出やすいところを5つに分けて整理します。どれか1つが決定打になるわけではなく、こうした小さな違いが重なって、当日のプレーの差になっていきます。
1 練習の「量」だけを見るか、「目的」まで見るか
練習をたくさんしている子は少なくありません。ただ、同じ1時間でも「今日は何を良くするための練習か」がはっきりしている子と、なんとなくメニューをこなしている子では、1年後の伸び方が変わってきます。
たとえば、リフティングを毎日100回続けている子がいたとします。それ自体は立派なことですが、「試合でトラップがずれるから、ボールの芯を見る練習として続けている」と言える子は、試合の中で意識が変わります。目的があると、練習と試合がつながります。
2 試合のあとに、何も残らないか、1つ残るか
試合が終わったあと、勝った・負けた、点を取った・取れなかったで終わってしまうことはよくあります。一方で、「今日うまくいったこと」と「次に変えたいこと」を1つずつでも言葉にしている子は、次の試合で試すことが決まっています。
この差は1試合ではほとんど見えません。しかし、年間に何十試合とある中で、毎回1つずつ持ち帰る子と、何も持ち帰らない子では、1年後に積み上がっているものがまったく違います。
3 苦手を避けるか、1つずつ減らすか
利き足ではないほうの足、ヘディング、守備の切り替え。どの子にも苦手はあります。得意なプレーを伸ばすことは大切ですが、セレクションのゲーム形式では、苦手なプレーが求められる場面も必ず来ます。
苦手を全部なくす必要はありません。ただ、「この3か月は左足のインサイドキックだけは逃げない」のように、期間を区切って1つずつ減らしていく子は、当日に苦手な場面が来ても慌てにくくなります。
4 「受かりたい」で止まるか、そこから逆算するか
「〇〇のジュニアユースに受かりたい」という目標は、とても大切な原動力です。ただ、それだけだと毎日の行動に落ちてきません。
受かるためには何が必要か、それは今の自分とどれくらい離れているか、では今月は何をするか、今週は何をするか、今日は何をするか。このように大きな目標を小さく分けていける子は、日々の練習に迷いが少なくなります。逆算は大人でも難しい作業なので、最初は親やコーチと一緒に考えて構いません。大事なのは、最後に「今日やること」を決めるのが本人であることです。
5 生活のリズムが整っているか
睡眠、食事、学校との両立。サッカーとは関係なさそうに見えて、1年という長さで見ると大きな差になります。夜更かしが続いたり、食事が偏ったりすると、練習の質も、成長期の体づくりも安定しません。
生活のリズムは、本人の意思だけでは整いにくい部分です。ここは家庭の協力が特に効くところだと言えます。
「落ちた」は、劣っているという意味ではない
ここまで受かる子の過ごし方を中心に書いてきましたが、一つ付け加えておきたいことがあります。セレクションの結果は、子どもの価値や将来を決めるものではありません。
募集人数はクラブによって限られていて、ポジションのバランスや、その年に必要としている選手像によって合否は左右されます。成長期には体の大きさや足の速さに個人差が大きく、同じ学年でも発育の時期が違います。落ちた理由が、その子の努力や能力とは関係のないところにあることも珍しくありません。不合格がどう決まるのかは、「セレクションの「不合格」の正体|能力の判定ではなく、構造の出力である」で詳しく書いています。
JFA(日本サッカー協会)は、トレセン制度の説明の中で、その「個」のレベルに合ったトレーニング環境を提供することは育成年代において非常に重要な考え方だとしています(トレセン概要(JFA))。あるクラブに合わなかったことは、その子に合う環境が別にあるということでもあります。
だからこそ、結果だけで1年間を評価しないでほしいのです。この1年で身につけた習慣は、結果がどうであっても、その先の中学・高校のサッカーで生きてきます。
1年をどう組み立てるか
セレクションまで1年ある場合、時期ごとに意識することを変えると、準備が進めやすくなります。あくまで一例として紹介します。まだ4・5年生の場合は、「小学4・5年生から始めるセレクション準備|6年生になってからでは間に合わないもの」も参考にしてください。
1年前〜半年前は「土台と習慣」
この時期は、結果を急がず、振り返りと練習の習慣を作ることを優先します。試合後に1つ振り返る、苦手を1つ決めて取り組む、生活のリズムを整える。地味ですが、ここで作った習慣があとの半年を支えます。
半年前〜3か月前は「目標の具体化」
受けたいクラブの情報を集め、募集要項や選考の流れを確認する時期です。どんな選手が求められていそうか、本人が自分なりに考えてみると、練習の目的がよりはっきりします。
3か月前〜当日は「出せる状態を整える」
新しいことを増やすより、今できることを当日に出せるようにする時期です。体のコンディション、試合での振り返り、ミスのあとの切り替えなど、これまで積み上げてきたものを確認していきます。
伸びが見えない時期を、どう過ごすか
1年かけて準備をしていると、必ずと言っていいほど「頑張っているのに変わらない」と感じる時期が来ます。試合で結果が出ない、トレセンに選ばれない、周りの子のほうが伸びているように見える。こうした時期に練習をやめてしまうか、続けられるかも、1年の中で差が出るところです。
伸びが見えにくい時期は、目に見える結果ではなく、続けてきた事実に目を向けると乗り越えやすくなります。「この3か月、試合のあとに毎回1つ振り返ってきた」「左足のキックを逃げずに練習してきた」。結果がまだ出ていなくても、やってきたことは本人の中に積み上がっています。
そのためにも、振り返りや練習の記録を、ノートやメモなど簡単な形で残しておくことをおすすめします。数か月前の記録を見返すと、本人も保護者も、少しずつ変わってきたことに気づけます。記録は、伸びが見えない時期に続ける力を支えてくれます。
保護者の方にできるのは、結果が出ない時期に「なんでできないの」と焦らせるのではなく、「ここまで続けてきたね」と事実を伝えることです。その一言が、もう少し続けてみようという気持ちにつながります。
準備の1年を支えた、ある選手の例
WiRM代表の桂陸人は、小学4年生でサッカーを始め、所属チームではスタメンぎりぎりの「8番目」の選手でした。小6の4月から、どうしてもサンフレッチェ広島のジュニアユースに行きたいという気持ちで、夜の公園で基礎技術を磨き、朝は走る日々を続けました。12月のセレクションでは、300人近い1次選考から3次選考の30人まで残り、合格しています。
一方で桂は、自身のコラムの中で、中学ではその身体能力だけで通用してしまい、頭を使ってプレーを変えていく習慣を身につけるのが遅れたことを振り返っています。準備の1年で積み上げるものは、体力や技術だけでなく、考えて振り返る習慣まで含めて考えてほしい、というのが私たちの考えです。
家庭だけで1年続けるのが難しいときの選択肢
試合のたびに振り返る、目標を月や週に分ける、毎日の行動を決める。どれも言葉にすると簡単ですが、1年続けるのは本当に大変です。親子だと、子どもが面倒がったり、親がつい答えを言ってしまったりすることもよくあります。
WiRMの「じりつLABO」では、子どもに必要な力として、言語化力・自発力・習慣化力・修正力・逆算力の5つを掲げ、それぞれをLv.1〜6で見える化しています。月ごとの目標から毎日のTodoに落とし込み、週1回のオンラインセッションと週ごとのフィードバック、月1回の保護者面談を通じて、「目標から逆算して、振り返って、直す」流れを習慣にしていく取り組みです。セレクションまでの1年を、家庭だけで抱え込まずに過ごしたいときの選択肢のひとつとして、知っておいていただければと思います。
まとめ
・セレクション当日のプレーは、それまでの習慣が表に出たもの。当日にできることは多くない
・差が出やすいのは、練習の目的、試合後の振り返り、苦手への向き合い方、目標からの逆算、生活のリズムの5つ
・落ちたことは、劣っているという意味ではない。募集人数やポジション、成長の時期など、本人の努力と関係のない要素も合否に影響する
・1年前は習慣づくり、半年前は目標の具体化、3か月前からは出せる状態づくりと、時期で意識を変えると準備が進めやすい
・身につけた習慣は、結果がどうであっても、その先のサッカーで生きる
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ここまでは一般論です。お子さんのことは、直接お聞きください
記事に書けるのは、どのチームにも当てはまる話までです。実際に何が足りていて何が足りないのかは、お子さん一人ひとり違います。
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