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COLUMN

サッカーで速くなるには|ジュニア期に伸ばせるスピードの考え方と走り方

コーンの間を前傾姿勢でスタートダッシュする小学生の男の子

「うちの子、足が速くなればもっと活躍できるのに」。少年サッカーの保護者なら、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。サッカーで速くなるために大切なのは、長い距離の最高速よりも、最初の数歩の加速と、走り方そのものです。

スピードは目に見えて分かりやすい武器で、子ども自身の自信にもつながります。ただ、走る速さは体の成長にも大きく左右されるので、焦っても仕方のない部分があります。この記事では、伸ばせる部分と待つしかない部分を分けながら、走り方の基本と家庭での考え方を順番に整理します。



サッカーで本当に必要なスピードとは

この記事で書いていることを、お子さんの状況に当てはめて聞くこともできます。LINEでは代表の桂陸人が直接お答えしています。
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「速い」と一口に言っても、サッカーで求められるスピードは陸上の短距離とは少し違います。

100メートルを走り切る力ももちろん役に立ちますが、試合で多いのは短い距離の勝負です。相手より先にボールに触れる、ゴール前で一歩前に入る、抜かれそうな場面で体を入れる。こうした場面では、止まった状態や歩いている状態から、どれだけ素早くスピードを上げられるかが問われます。

トップスピードに乗るまでには、ある程度の距離が必要です。けれどサッカーの局面では、差はほんの数メートルでつくことが少なくありません。誰より先にボールに触れられるかは、最高速より出だしの速さで決まることが多いのです。

この視点を持つと、練習の方向性も変わります。長い距離を全力で走るより、短い距離を鋭くスタートする練習のほうが、試合に直結します。切り返しや緩急まで含めた素早さについては、サッカーのアジリティの記事にまとめています。



サッカーで速くなるための走り方の基本


姿勢と腕の振り

速く走るための土台は姿勢です。背中を丸めず、頭から体を一本の軸で保ち、わずかに前傾する。この姿勢が崩れると、脚の力が地面にうまく伝わりません。

見落とされがちなのが腕の振りです。腕を後ろへしっかり引くように振ると、その反動で脚も前に出やすくなります。子どもには「肘を後ろに引く」「腕を振ると足がついてくる」と伝えると、感覚をつかみやすくなります。


地面の押し方

速い選手は、地面を短く強く押して進みます。足全体でベタッと着地するのではなく、足が地面に触れている時間を短くして、弾むように走るイメージです。

なわとび、スキップ、その場でのもも上げといった弾む動きは、この感覚を養うのに向いています。特別な道具も場所もいらないので、家の前や公園でも続けられます。


スタートと加速

スタートの瞬間は、体を低く前傾させ、最初の数歩を小さめの歩幅で力強く刻みます。そこから徐々に体を起こしながらスピードを上げていきます。「最初は前傾、だんだん起き上がる」という流れを意識するだけでも、加速の形は変わります。

練習としては、5〜10メートルほどの短いダッシュを、しっかり休みを入れながら繰り返すのが基本です。疲れた状態でだらだら走ると、フォームが崩れたまま体に覚え込ませることになります。本数を増やすより、元気なうちに短く集中して行うほうが、質を保てます。



自宅の近くでできる練習

場所がなくてもできる形を、いくつか挙げておきます。

・なわとび:前跳びを軽く弾むように。回数より、接地の短さを意識する

・スキップ:大きく、遠くへ。腕を大きく振る

・短いダッシュ:立った状態、背中を向けた状態、座った状態など、スタートの形を変える

・合図ダッシュ:親が手を叩いたら走る。予測ではなく、見て反応する練習になる

・鬼ごっこ:友だちや兄弟と。止まる、切り返す、また加速する動きが自然に入る

どれも、楽しくできる範囲で十分です。特に低学年のうちは、遊びの中で走り回る時間そのものが、いちばんの土台になります。



速さは、体の成長に大きく左右される

ここで、保護者の方に知っておいてほしい研究を一つ紹介します。

ジュニア期のトレーニングについては、「神経系が発達する時期なので、この時期にスピードの土台が決まる」という説明をよく目にします。ところが、岩手大学の研究者による科研費の研究課題では、小学生から高校生までのサッカー選手98名を調べた結果、膝を伸ばす筋肉の運動単位の発火頻度は、年齢とともに変化しなかったと報告されています。そして、走る速さの発達には筋の大きさや脚の長さの変化が強く影響していて、神経系の発達の影響はこれまで考えられていたより限定的かもしれない、と述べられています(科研費の研究成果報告)。

もちろん、一つの研究課題の結果であり、これだけですべてが決まるわけではありません。走り方を学ぶことに意味がないという話でもありません。ただ、家庭での受け止め方としては、大きなヒントになると思います。

いま速くない子が、努力が足りないとは限らない。いま速い子が、ずっと速いとも限らない。体が大きくなる時期は子どもによって違い、速さの伸びもそれに引っ張られる。そう考えておくと、周りの子と今の速さを比べて焦る理由は、ずいぶん小さくなるのではないでしょうか。



私自身の話

私自身の経験を書きます。

小6の4月から、親に付き合ってもらって夜の公園で基礎技術を磨き、朝は走っていました。すると夏を過ぎるころ、足が急激に速くなりました。走り込みの成果だけとは言い切れません。ちょうど体が変わる時期と重なっていたのだと、今は思います。

ただ、その先の話も書いておく必要があります。中学はその身体能力だけで通用してしまいました。ところが高校に入ると、周りの体が大きくなり、スピードだけで抜けていたドリブルや裏抜けが、まったく通じなくなったのです。

速さは大きな武器です。しかし体の成長で手に入った速さは、周りの成長によって差が縮まることもあります。だからこそ、速さを伸ばしたい時期にも、ボールを扱う技術と、考えてプレーする力を並行して育てておいてほしいと思います。



試合で速く見える子がやっていること

ここまで走り方の話をしてきましたが、もう一つ大事な視点があります。試合で速く見える子が、必ずしも足の速い子とは限らないということです。

同じ足の速さでも、相手より早く動き出せば、先にボールに触れます。パスが出る前に周りを見て、次に起きることを予測している子は、走り始めるのが一歩早い。この一歩は、走力の差を埋めるのに十分な大きさになることがあります。


動き出しの速さは、見ることから始まる

ボールが来る前に首を振って周りを見る。相手がどこにいて、味方がどこに出そうとしているかを知っておく。こうした習慣は、体の大きさに関係なく身につけられます。見る習慣については、当サイトの状況判断の記事に詳しく書いています。

試合を見に行ったときは、速く走れたかどうかだけでなく、「ボールが来る前に動き出せていたか」を見てあげてください。足が速くなくても勝負できる場面があると知ることは、子どもにとって大きな救いになります。



学年ごとの考え方


低学年:いろいろな走り方を遊びで

この時期は、フォームを細かく直すより、たくさん走り回ることを優先します。鬼ごっこ、ボールを追いかける遊び、坂道や階段の上り下り。楽しいから続く、という状態を作ることがいちばんです。


中学年:走り方の形を覚える

腕の振りや姿勢など、言葉で伝えたことを体で試せるようになってきます。一度に何個も直そうとせず、「今日は腕だけ」と一つに絞ると、本人も意識しやすくなります。


高学年:短いダッシュと、体の変化への対応

体が大きく変わり始める子が出てきます。一時的に動きがぎこちなくなったり、膝やかかとに痛みが出たりすることもあります。痛みがあるときは、無理に走らせず、休むことも練習の一部です。成長期のトラブルについては、当サイトの怪我予防の記事もご覧ください。



よくある勘違い


長い距離を走れば速くなる

持久力の練習と、スピードの練習は別のものです。長い距離を走ることにも意味はありますが、加速を鍛えたいなら、短い距離を全力で、十分に休みながら行うほうが理にかなっています。


練習をたくさんやれば、すぐ速くなる

走り方は一度の指導で変わるものではありません。数週間で変化が見えないからといって、やめてしまう必要はありません。体の成長も含めて、月単位、年単位で見ていくものです。



速さは焦らず育てる


他の子と比べない

「もっと速く走れ」とプレッシャーをかけるより、「腕の振りがよくなってきたね」と過程を認めるほうが、子どもは前向きに取り組めます。比べる相手は、周りの子ではなく、数か月前のその子自身です。


まず一度、測ってみる

セレクションを考えているご家庭は、感覚で判断せず、一度実測してみるのがおすすめです。測り方はセレクションの体力測定対策の記事で紹介しています。数か月おきに同じ条件で測れば、伸びが見えるようになり、本人の励みにもなります。


無理な筋トレを急がせない

成長期の体に、大人と同じような強い負荷をかけるのは急ぐ必要がありません。まずは自分の体を思いどおりに動かせることが先です。

そして、走る力を支えるのは、食事と睡眠です。練習量を増やす前に、食べること、寝ることが足りているかを確認してください。成長期の体づくりについてはジュニアサッカーの食事・栄養の記事で触れています。



まとめ

サッカーで速くなるために大切なのは、最高速よりも最初の数歩の加速です。姿勢、腕の振り、地面の押し方、スタートの形は、遊びや短いダッシュの中で身につけていけます。

一方で、速さの発達には体の成長が大きく関わっています。今の速さだけで判断せず、走り方を整えながら、体が変わる時期を待つ。その間に、技術と考える力も育てておく。これが、長い目で見たときの現実的な考え方です。


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