強豪チームなのにトレセンに呼ばれない|「同一チームに偏らない」を逆から読む
強いチームにいるのに、トレセンに呼ばれない。同じチームの、自分より出番の少ない子が呼ばれている。こうした状況は、家庭にとってかなり納得しづらいものです。
勝っているチームの主力なら、当然呼ばれるはず。そう思うのは自然なことです。ただ、トレセンの仕組みを読んでいくと、強豪チームにいてもトレセンに呼ばれないことには、説明のつく部分があります。
この記事で書いていることを、お子さんの状況に当てはめて聞くこともできます。LINEでは代表の桂陸人が直接お答えしています。
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この記事では、JFAの公開資料に書かれていることと、そこからの解釈を分けながら、呼ばれなかったときの受け止め方と、家庭で動かせる部分を整理します。トレセン全体の選考の考え方は、トレセンの選考基準を整理した記事にまとめています。
強豪チームでもトレセンに呼ばれない理由は、要項に書かれている
「同一チームに偏ることのないよう配慮する」
JFAは2019年度のJFAフットボールフューチャープログラム トレセン研修会U-12の要項で、選手選考の基準をこう示しています。「選手の潜在的な能力、将来性、個性等を重視し、後の日本代表へとつながる可能性のある選手を選出する」。そして続けて、「選考にあたっては同一チームに偏ることのないよう配慮する」と書いています。
この研修会は、全国48チーム(東京都2チーム、道府県1チームずつ)、各チーム16名で構成されるものでした。要項は年度ごとに出るものなので、最新の内容は各年度で確認が必要ですし、地区や都道府県のトレセンの選考方法は地域によって違います。それでも、JFAが選考で何を大事にしているかを読む手がかりにはなります。
強豪チームの主力を上から順に並べる作業ではない。少なくとも要項の言葉は、そう読めます。
逆から読むと、見え方が変わる
この一文を、保護者の立場から逆に読んでみます。
強いチームに所属していることは、それだけでは有利にならない。同じチームから何人も選ぶことに、選ぶ側が配慮する場面がある。つまり、同じチームに力のある子が何人もいるほど、全員が呼ばれるとは限らないということです。
もちろん、要項は「強豪チームの子を減らす」と書いているわけではありません。個々の選考で何が起きたかは、外からは分かりません。ただ、「強いチームなのに呼ばれない=うちの子の評価が低い」と一直線に結びつける必要はない、ということは言えると思います。
選ぶ側が探しているのは、完成品だけではない
今日の結果と、これからの伸びしろは別の話
要項の言葉をもう一度見ると、並んでいるのは「潜在的な能力」「将来性」「個性」です。今の順位を決める言葉ではなく、この先を見る言葉です。
JFAのトレセン概要にも、「トレセンでは、チーム強化ではなく、あくまでも『個』を高めることが目標です」とあります。チームの勝利のために集まる場ではないのです。
ここからは私の解釈です。強いチームで結果を出している子は、すでに完成度が高く見えます。それは間違いなく強みです。ただ、チームの戦い方や周りの選手の力に支えられている部分は、外から見ると切り分けにくいことがあります。この子が一人で何を持っているのか。その答えが見えにくいまま、選考の場が終わることもあるのではないかと思います。
一回の出来だけで決まるものでもない
先ほどの要項には、もう一つ大事な一文があります。地域の責任者は「一回の選考会の出来・不出来のみならず、継続的な活動の中から」選ぶこと、と書かれています。
一度の選考でよいプレーをしたかどうかだけでなく、続けて見て判断するという考え方です。呼ばれなかった理由を、「あの日のあのプレー」に絞って考えすぎないほうがいいのは、このためです。
呼ばれる子と呼ばれない子の差を、決めつけない
保護者の方の中には、呼ばれた子のどこが評価されたのかを知りたいと思う方もいるはずです。ただ、数値化された基準が公表されているわけではなく、個々の評価の理由が家庭に説明されることも多くありません。
ここで「あの子はコーチに気に入られたから」「あのチームは推薦に強いから」といった理由を想像で埋めてしまうと、確かめようのない話が家の中に残ります。分からないことは、分からないままにしておく。そのうえで、わが子のプレーで見えていることを話題にするほうが、次につながります。
出番の多さは、評価と同じではない
もう一つ混ざりやすいものがあります。チーム内の序列と、トレセンの評価です。
チームの序列は、そのチームが勝つための配置です。ポジションの兼ね合いもあれば、組み合わせの相性もあります。一方でトレセンの選考は、別の目的で、別の人が見ています。この二つは連動していると思われがちですが、判断している人も、判断の目的も違います。
だから、自分より出番の少ない子が呼ばれることも起きます。その子には、チームの序列には表れない何かを、選ぶ側が見たのかもしれません。反対に、チームで出番の多い子が呼ばれないこともあります。どちらも、制度として不自然なことではありません。
私自身の話を一つ書きます。小学4年でサッカーを始めたとき、私はチームでスタメンぎりぎりの8番目の選手で、トレセンにも引っかかりませんでした。それでも小6の12月、サンフレッチェ広島ジュニアユースのセレクションで、300人近い1次選考から3次選考の30人に残り、合格しました。
トレセンに呼ばれなかったことも、チームの順位も、その先を決めるものではありませんでした。
トレセンに呼ばれない時期に、家庭が持ち込まないほうがいいもの
「あの子より上のはずなのに」
この状況でいちばん避けたいのは、家の中で「あの子より上のはずなのに」を口にし続けることです。
親としては、わが子をかばいたい気持ちから出る言葉だと思います。ただ、他の子を基準にした瞬間、子どもの関心は自分のプレーから離れます。そして比較は、勝っても負けても終わりません。呼ばれたら次は別の子と比べ、呼ばれなければその子を見るたびに気持ちが沈みます。
チームや指導者への不満
「監督が推薦してくれなかったのでは」「チームが有名なのに、なぜ」。こうした話を子どもの前で繰り返すと、原因は自分の外にある、という受け止め方が根づきます。
外に原因を置くと、一時的に気持ちは楽になります。その代わり、自分で動かせる部分の話が止まってしまいます。
結論を急ぐこと
トレセンは年度ごとに見直されます。この仕組みはトレセンは年度ごとに見直されるという記事で詳しく書いています。今年の名簿は来年の名簿ではありません。今年呼ばれた子が来年も呼ばれるとは限らず、その逆も同じです。
今回呼ばれなかったことを、才能の判定のように扱わないでください。
家庭で動かせる3つのこと
制度そのものは変えられません。動かせるのは家庭の中の、次の3つです。
1. チームの役割の外で、何が通じるかを見つける
強いチームでは、周りが上手いぶん、難しいプレーを選ばなくても済む場面があります。自分でボールを運ぶ、一人でやり切る、苦しい場面で受ける。こうしたプレーがどれくらいできるかは、チームの結果だけでは分かりません。
試合の帰りに「今日、自分の力でやり切れた場面はどこだった?」と聞いてみてください。勝ち負けの話とは別の話題が、子どもの中に残ります。
2. 比べる相手を、前の自分にする
「あの子より」ではなく「3か月前の自分より」。できるようになったことを本人が言葉にできると、呼ばれる呼ばれないに関係なく、やることが見えてきます。
3. 名簿の話を、早めに終わらせる
呼ばれなかった日の夜の声かけについては、難しいところがあります。励まそうとして長く話すと、かえって子どもの中で大きな出来事になっていきます。短く受け止めて、次の練習の話に移る。それで十分な日もあります。
地区トレセンの段階で何が見られているかについては、地区トレセンに選ばれるにはの記事も参考にしてください。
強豪チームにいることの価値は、なくならない
ここまで読むと、強豪チームにいることには意味がないように感じるかもしれません。そうではありません。
強度の高い相手と毎週練習できること。上手い味方の判断を近くで見られること。試合に出るために競争があること。これらは、トレセンの名簿とは関係なく、日々の成長につながる環境です。
チームを選んだ理由が「トレセンに呼ばれやすいから」だったとしたら、呼ばれなかったときに環境そのものを疑いたくなります。しかし、トレセンは日常の活動とは別の場所です。JFAの要項でも、チームの活動と個の活動の両方を大切にする考え方が示されています。
今のチームで何を伸ばせているか。本人は何を楽しいと感じているか。名簿に名前があるかどうかとは別に、この2つを親子で確かめてみてください。その答えがはっきりしていれば、呼ばれなかった時期も、チームでの毎日が無駄になることはありません。
反対に、本人が移籍やセレクションなど別の環境を考え始めたときも、トレセンの結果だけを理由に決めないことをおすすめします。一度の名簿より、この先の数年をどこで過ごしたいかのほうが、ずっと大事な問いだからです。
まとめ
強豪チームなのにトレセンに呼ばれないことは、珍しいことでも、不自然なことでもありません。JFAの要項には「同一チームに偏ることのないよう配慮する」と書かれており、重視されているのは今の順位より、潜在的な能力、将来性、個性です。
チーム内の序列と、外部の選考は別のものです。そしてトレセンは年度ごとに見直されます。家庭の中に比較を持ち込まないこと。それだけで、その子が自分のプレーに向ける時間は増えていきます。
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ここまでは一般論です。お子さんのことは、直接お聞きください
記事に書けるのは、どのチームにも当てはまる話までです。実際に何が足りていて何が足りないのかは、お子さん一人ひとり違います。
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