地区トレセンに選ばれるには|いちばん下の入口で見られていること
トレセンの話は、どうしてもナショナルや都道府県の話から始まります。でも、とんでもなく多くの子にとっての現実的な入口は、地区トレセンです。
この記事では、いちばん下の層で何が起きているのかを、制度の形から逆算して整理します。
地区トレセンの位置づけ
この記事で書いていることを、お子さんの状況に当てはめて聞くこともできます。LINEでは代表の桂陸人が直接お答えしています。
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JFAのトレセン制度は4階層です。ステージ1がナショナルトレセン(JFA)、ステージ2が地域トレセン(9地域)、ステージ3が都道府県トレセン、ステージ4がブロック・地区トレセン。
地区トレセンは、この一番下です。一番下ですが、上の層はここから積み上がっていく構造になっています。つまりここを飛ばすことは、基本的にできません。
地区の規模や選考方法は、都道府県協会や地区のサッカー協会ごとに違います。全国一律の形式はありません。だからこそ、地元の情報を取ることが先です。
地元の情報は、どこから取るか
では、地元の情報はどこから取ればいいのか。順番があります。
最初に聞く相手は、今の所属チームの指導者です。地区によっては、選考の案内が所属チームを通じて届きます。いつ頃に話が来るのか、チームとしてどう参加を決めているのか。これを知らないまま「うちの子はなぜ呼ばれないのか」と考えても、答えは出ません。
次に、都道府県サッカー協会や地区協会のホームページです。トレセン活動のお知らせや、年間の活動予定を載せている協会もあります。載っていない地区もあります。載っていなければ、それも一つの情報です。案内は所属チーム経由で来る、と判断できます。
最後に、上の学年の保護者です。ただし、ここで聞けるのは「去年はこうだった」という一例です。形式は年度や地区で変わることがあるので、参考にはしても、そのまま当てはめないでください。
選考の発想は、上と同じ
地区の選考基準を公表している資料は、基本的にありません。ただ、上の層でJFAが何を言っているかは公表されています。
JFAはナショナルトレセンU-14の選考について、「選手の潜在的な力と将来性、個性を重視し、日本代表へつながる選手が対象」と説明しています。数値化された基準は公表されていません。
またJFAフットボールフューチャープログラム トレセン研修会U-12の選考の観点は「潜在的な能力、将来性、個性などを重視」で、「同一チームへの偏りを避ける」と明記されています。
今日の試合で何点取ったかではなく、この子が3年後にどこまで行くかを見ている。完成品を探していない。この発想は、地区の層でも同じです。
地区の層だからこそ、見られているもの
ここからは私の解釈です。
地区の選考は、対象人数が大きい。しかも、見ているのは普段の試合や短い選考会です。この条件で使える情報は、「常に出ているもの」だけです。
ボールに触っていない時間の立ち位置と首の動き。球際に行く一歩目。ミスをした直後の3秒。指示に対する反応の速さ。
この4つは、ボールが来なくても出続けます。チームの強さにも依存しません。強くないチームの子でも、この4つなら同じように出せます。
4つは、普段の練習でしか育たない
この4つには共通点があります。選考会の当日だけ頑張っても、出せないことです。
首を振る習慣は、ボールを受ける前に周りを見ることを何百回も繰り返して、ようやく体に入ります。球際の一歩目も、ミス後の3秒も同じです。普段の練習でミスのたびに下を向いている子が、選考会の日だけすぐに切り替えられることはありません。
だから家庭でできることは、普段の練習や試合の見方を少し変えることです。試合を見に行ったとき、ボールを持っている場面ではなく、ボールを持っていない場面を見てみてください。どこに立っているか。首は動いているか。ミスしたあと、次のプレーにどれだけ早く戻っているか。
そして見たことを、結果と結びつけずに本人に伝える。「今日、取られたあとすぐ追いかけてたね」。点を取ったかどうかではなく、この4つについて声をかける。子どもは、親が何を見ているかで、自分が何を大事にするかを決めます。
4つを、一つずつ分けて見る
4つをまとめて見ようとすると、どれも中途半端になります。一つずつ、分けて見てください。
立ち位置と首の動き
ボールが反対サイドにあるとき、どこに立っているか。味方がボールを持った瞬間に、受けられる場所へ動いているか。そしてボールが来る前に、首を振って周りを見ているか。
ここは、ボールに触った回数とは関係がありません。一試合でほとんどボールが来なかった日でも、ここは見えます。
球際の一歩目
相手とボールを競る場面で、最初の一歩が出ているか。勝ったか負けたかではなく、行こうとしたかどうかです。
体の大きさで勝てない時期は必ずあります。勝ち負けで声をかけると、負けが続いた子は一歩目を出さなくなります。見るのは、一歩目のほうです。
ミスをした直後の3秒
ボールを取られた、パスがずれた。その直後に、下を向くのか、すぐに次の動きに移るのか。
ここは、親の反応がそのまま影響するところでもあります。ミスのたびに観客席から声が飛ぶと、子どもは観客席のほうを気にします。ミスの直後は、親は何も言わない。それだけで、子どもの3秒は変わります。
指示に対する反応の速さ
コーチが何かを伝えたとき、すぐに動きを変えられるか。練習の合間の説明を、こちらを向いて聞いているか。
家でできる準備もあります。何かを頼んだとき、「あとで」ではなく、まず返事をして動く。サッカーとは関係のない場面で身につく習慣が、ピッチでもそのまま出ます。
走力は、地区の層でも差になる
もう一つ、家庭で動かせる領域があります。
スポーツ庁の「令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によると、小5男子の50m走の全国平均は9.46秒で、平成24年度の9.36秒より遅くなっています。小5女子は9.77秒で、調査開始以来もっとも遅い水準。1週間の総運動時間が60分未満の割合も増加傾向です。
全体が下がっているということは、走れる子の相対的な価値が上がっているということです。技術は今、動画でもスクールでも学べて差がつきにくい。走力は、差がつけやすい。
なお、成長期の負荷については個人差が大きく、トレーニングの量を上げる前に必ず専門家に相談してください。
そのうえで、家庭で考えやすいのは、特別なトレーニングを足すことより、走る時間を生活の中に戻すことです。公園で鬼ごっこをする、近所までは歩いたり走ったりして行く、休みの日に外で遊ぶ時間をつくる。1週間の総運動時間が減っている今、こうした時間そのものが、他の子との差になります。
数字を追いかける必要はありません。大事なのは、走ることを嫌いにさせないことです。タイムを毎週測って比べるより、楽しく走っている時間を増やすほうが、長い目で見て伸びます。
推薦されないことを、前提にしない
よくある相談が「うちのチームは推薦してもらえない」というものです。
ここで考えてほしいのは、推薦されない理由を「チームの立場」に置いてしまうことの影響です。チームのせいだと結論づけた瞬間、子どもが自分で動かせる部分の話が止まります。
JFAの研修会では「同一チームへの偏りを避ける」と明記されています。強豪チームの主力だけを並べる作業ではない。少なくとも上の層の考え方は、チームの強さで選手を決めるものではありません。
だから、まずは所属チームの指導者に、本人が一つだけ聞いてみてください。「地区トレセンに行くには、何が足りないですか」。推薦するかどうかを決める立場の人から、具体的な課題を一つ持ち帰る。それが、いちばん下の入口で親子ができる、いちばん現実的な一歩です。
地区トレセンを、ゴールにしない
最後に、親の側の話をします。
地区トレセンは入口です。入口ですが、親にとっては分かりやすい目標でもあります。名前が出る、ユニフォームがもらえる、周りの保護者から声をかけられる。だから、いつのまにか「地区トレセンに入ること」そのものが目標になりやすい。
でも、ここまで見てきたとおり、選考で見られているのは伸びしろです。伸びしろは、毎日の練習の中でしか育ちません。トレセンに入るために練習するのではなく、毎日の練習でやっていることが、たまたまトレセンの場で見える。順番は、こちらです。
親が「トレセン、トレセン」と言い続けると、子どもにとって練習は「選ばれるための試験」になります。試験だと思って練習している子は、失敗を避けます。失敗を避ける子は、首を振る回数も、球際の一歩目も減ります。見られている4つとは、逆の方向です。
家庭で掲げる目標は、トレセンの名前ではなく、4つのどれかにしてください。「今月は、ボールが来る前に首を振る」。それができるようになった先に、地区トレセンの入口があります。
まとめ
地区トレセンは4階層のいちばん下ですが、上の層はここから積み上がる構造になっています。形式は地域ごとに違うので、まずは所属チームの指導者、協会のホームページの順で、地元の情報を取ってください。
選考の発想は上と同じで、今の完成度ではなく伸びしろを見ています。短時間で伝わるのは、位置取りと首、球際の一歩目、ミス後の3秒、指示への反応の4つ。この4つは、チームの強さに依存しません。そして当日だけでは出せないので、普段の練習と、親の声のかけ方で育てていくものです。
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ここまでは一般論です。お子さんのことは、直接お聞きください
記事に書けるのは、どのチームにも当てはまる話までです。実際に何が足りていて何が足りないのかは、お子さん一人ひとり違います。
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