トレセンとセレクションはつながっているのか|肩書きが効く場面と、効かない場面
「トレセンに入っておけば、セレクションで有利になるのでしょうか」。トレセンとセレクションの関係は、保護者の方からよくいただく質問のひとつです。
先に答えを書くと、場面によって違います。制度としては別のものですが、経験として残るものはあります。一方で、肩書きがまったく助けてくれない場面もはっきりあります。この記事では、公表されている事実と、私自身の経験と解釈を分けて整理します。
制度としては、別のものです
この記事で書いていることを、お子さんの状況に当てはめて聞くこともできます。LINEでは代表の桂陸人が直接お答えしています。
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まず前提を揃えます。
トレセンは、JFAが運営する育成の仕組みです。地区、都道府県、地域、ナショナルと段階があり、JFAは公式のトレセン概要で、トレセンでは「チーム強化ではなく、あくまでも『個』を高めることが目標」と説明しています。つまり、どこかのチームに選手を入れるための制度ではありません。
セレクションは、各クラブが自分のチームに入れる選手を選ぶための選考です。主催する主体も、目的も違います。
ここから分かるのは、トレセンの名簿に入っていることが、どこかのクラブの合格を保証する仕組みは、公表された制度としては存在しないということです。トレセンの選考そのものの仕組みは、トレセンの選考基準の記事にまとめています。
募集枠は、肩書きでは広がらない
クラブ側の枠についても確認しておきます。
FC東京U-15深川の2027年度加入セレクションの募集人数は「若干名」です。川崎フロンターレU-15の2027年度加入の案内には、募集人数が「0〜若干名」と書かれています。ゼロもありうると、クラブ自身が明記しているということです。
この枠の狭さは、トレセン経験の有無で変わるものではありません。トレセンに呼ばれている子どうしが、同じ若干名の枠を争うことも当然あります。
私自身は、トレセンに引っかからなかった
ここからは私自身の話です。
小学生のころの私は、チームでスタメンぎりぎりの「8番目」の選手でした。トレセンにも引っかからない、どこにでもいる子どもです。
それでも小6の12月、サンフレッチェ広島ジュニアユースのセレクションで、300人近い1次選考から3次選考の30人まで残り、合格をもらいました。
もちろん、これは一人の、一度きりの話です。ただ、少なくとも「トレセンに入っていなければセレクションは受からない」という考え方が絶対ではないことは、自分の経験として言えます。その年、私が持っていたのは肩書きではなく、4月から積み上げた基礎技術と走り込み、そして当日のプレーでした。
それでも、効く場面はある
ここからは私の解釈です。公表された事実ではないので、そのつもりで読んでください。
トレセンの経験が効くとすれば、それは合否の判定ではなく、選考の場での振る舞いのほうだと考えています。
初対面の環境でプレーを成立させる経験
初めて会う選手と、初めての会場で、短い時間でプレーを成立させる。これは、セレクションの状況そのものです。トレセンは、この状況を体験できる場でもあります。
一度でも経験している子は、会場で固まりにくい。これは肩書きの力ではなく、慎重に言えば慣れの問題です。ただ、普段のチームではすぐ声を出せる子が、知らない子の中では何も言えなくなることは珍しくありません。その意味で、慣れの差は小さくないと思います。
基準が上がる経験
もう一つは基準の問題です。普段のチームにはいないレベルの子とプレーすると、「このレベルがあるのか」と知ることになります。
この基準は、その後の日常の練習の見え方を変えます。パスの速さ、寄せの速さ、判断の速さ。自分のチームで当たり前だったものが、当たり前ではなくなる。持ち帰れるものとして、いちばん大きいのはここかもしれません。
効かない場面のほうが、はっきりしている
逆に、肩書きが効かない場面ははっきりしています。選考当日のプレーそのものです。
見られるのはその日のプレーであり、見ている指導者の前で何ができたかです。セレクションでどこを見られるのかについては、セレクションに受かる子の特徴を読んでいただくと、当日の見られ方が整理しやすいと思います。
そして、肩書きが効かないのはセレクションの先も同じです。
私はU-14からU-18まで世代別の日本代表に選ばれ、高3ではサンフレッチェ広島ユースで背番号10をつけ、高校年代の日本一も経験しました。それでも、トップチームへの昇格の評価は「保留」でした。
肩書きは、結果を保証しません。これは比喩ではなく、自分の話として書いています。
トレセンとセレクションで迷いやすい3つの質問
保護者の方が迷いやすい場面を、3つ取り上げます。
トレセンに呼ばれていないと、受けても無駄ですか
無駄かどうかを、肩書きで決める必要はありません。まず確認すべきなのは、募集要項の受験資格です。対象の学年、通える距離、所属チームの承諾、全日程に参加できることなど、受けるための条件はクラブごとに書かれています。
受験の条件を満たしているのなら、あとはその子が受けたいかどうかです。「トレセンに入っていないから」と家庭の中で先に諦めてしまうのが、いちばんもったいないと思います。募集要項の読み方は、当サイトの募集要項の読み方の記事で整理しています。
アンケートにトレセン歴を書いていいですか
聞かれている項目があれば、事実をそのまま書けば大丈夫です。逆に、書いたから評価が上がると期待しすぎないほうがよいと思います。
見ている指導者は、紙に書かれた経歴より、目の前のプレーを見に来ています。経歴の欄よりも、「サッカーで大切にしていること」を自分の言葉で話せるかのほうが、準備する価値があります。この準備については、当サイトの面談・アンケート対策の記事を読んでみてください。
トレセンの日とセレクションの日が重なったら
どちらが正解とは言えません。本人の目標、そのセレクションの優先度、トレセンの活動の位置づけによって変わります。
大切なのは、親が決めてしまわないことです。両方の日程を並べて見せて、本人にそれぞれの意味を考えさせ、決めたら早めに関係する指導者へ連絡します。連絡のしかたも含めて、自分で決めて自分で伝える経験になります。
学年によって、考え方は変わる
トレセンとセレクションの距離感は、学年によっても変わります。
小学4・5年生のうちは、セレクションはまだ先の話です。トレセンに呼ばれるかどうかより、基礎技術と、自分で考える習慣のほうに時間を使ってください。トレセンは、呼ばれたら基準を知る機会として活用する、くらいの距離感で十分です。
小学6年生になると、セレクションが具体的な予定になります。この時期にトレセンの結果に一喜一憂していると、目の前の準備に集中できなくなります。受けるクラブの要項を確認し、日程を並べることのほうが、優先度は高いはずです。
どの学年でも共通するのは、トレセンの結果は、その時点の、その地区の、その選考の結果でしかないということです。子どもの将来を決める通知ではありません。
家庭で考えておきたい3つのこと
では、保護者の方はどう考えておけばよいのでしょうか。3つに絞ります。
トレセンをセレクションの手段にしない
「セレクションのためにトレセンに入る」と考えると、呼ばれなかったときに、進路そのものが閉じたように感じてしまいます。実際には別の制度です。トレセンの結果は、セレクションの結果を決めません。
トレセンは毎年の見直しがある仕組みでもあります。一度落ちても終わりではないことは、トレセンは年度ごとに見直されるで詳しく書きました。
呼ばれた子には「何を持ち帰ったか」を聞く
呼ばれている場合は、帰宅後の声かけを少し変えてみてください。「どうだった?」よりも「自分のチームと何が違った?」「次の練習で何を試す?」のほうが、経験が言葉になります。
トレセンに行くこと自体が目的になると、基準が上がる経験は残りにくくなります。
呼ばれない子には、別の場で同じ経験を作る
トレセンで得られる経験のうち、「初対面の環境でプレーする」は、ほかの場でも作れます。クラブの練習会や体験参加、別のチームとの練習試合などです。
呼ばれなかったことを嘆くより、経験の中身を分解して、別の形で用意する。家庭が動かせるのは、こちらのほうです。
呼ばれている子の親が気をつけたいこと
トレセンに呼ばれていると、親のほうが安心してしまうことがあります。ただ、ここにも落とし穴があります。
一つは、周りからの見られ方です。「トレセンの子」と言われ続けると、本人が失敗を怖がるようになることがあります。肩書きを守るためのプレーが増えると、新しいことに挑戦しなくなります。
もう一つは、翌年の見直しです。呼ばれなくなったときに、本人が自分の価値まで失ったように感じることがあります。呼ばれている間から、家庭で肩書きの話をしすぎないことが、そのときの備えになります。
褒めるなら、呼ばれたことよりも、そこで試したことや、持ち帰ったことを褒めてください。肩書きではなく中身を見ている親の態度は、子どもにも伝わります。
まとめ
トレセンとセレクションは、主催する主体も目的も別の制度です。名簿に入ることが合格を保証する仕組みはなく、募集枠も肩書きでは広がりません。
ただし、初めての環境でプレーを成立させる経験と、基準が上がる経験は残ります。効くのは肩書きではなく、そこで何を持ち帰ったかのほうです。呼ばれた子も、呼ばれなかった子も、そこは同じです。
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ここまでは一般論です。お子さんのことは、直接お聞きください
記事に書けるのは、どのチームにも当てはまる話までです。実際に何が足りていて何が足りないのかは、お子さん一人ひとり違います。
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