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COLUMN

サッカーのセレクションで受かる子|本当に見られている3つ


私が本格的にサッカーを始めたのは、小学4年生のときです。広島高陽FCという、地元の小学校から選手が集まってくるクラブでした。そのとき私は、チームで8番目くらいの選手でした。小学生のサッカーは8人制です。つまり、スタメンぎりぎり。抜きん出てうまい子ではありませんでした。

それから2年後、私はサンフレッチェ広島ジュニアユースのセレクションを受け、約300人の中から最終選考に残った30人に入りました。この記事では、セレクションで技術以外のどこが見られているのかを、受かった側の当事者として、そしてその後同じ選考を通ってきた選手たちを間近で見てきた立場から書きます。



いま上手いかどうかと、選ばれるかどうかは別の話

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最初に書いておきたい前提があります。いま上手いかどうかと、選ばれるかどうかは、別の話だということ。そして、選ばれることと、その先で生き残ることも、また別の話だということです。

小学4年でチームの8番目だった私が、2年後に300人の中の30人に入りました。逆に、当時私より明らかに上手かった子が、その場に残らなかったこともあります。ここを取り違えると、いまの序列を見て将来を決めつけてしまうことになります。



300人が集まり、30人が残った日

小学6年生のとき、私はサンフレッチェ広島ジュニアユースのセレクションを受けました。1次選考には約300人が集まりました。最終の3次選考に残ったのは30人です。

いまも、この構造は変わっていません。むしろ厳しくなっています。

たとえば川崎フロンターレU-15は、2027年度加入の募集要項に、募集人数を「0〜若干名」と書いています。ゼロもありうる、とクラブ自身が公式に明記しているということです。FC東京U-15深川も「若干名」。応募者数も合格者数も、Jクラブは公表していません。だから「倍率何倍」と語る記事はたくさんありますが、そのほとんどは根拠が示されていません。

確かなのは、枠は数人だということ。そして、そこに向かって全国から子どもが集まってくるということです。

そのなかで、何が見られているのか。技術以外のところで、はっきり差がついていた点が3つあります。



① まず「戦えるか、走れるか」を見られている


意外に思われるかもしれませんが、いまのセレクションで最初にふるいにかかるのは、足元の技術ではありません。

技術は、今の時代どの子も高いレベルにあります。スクールも情報も溢れていて、止める蹴るができる子は珍しくない。だからこそ、「どれだけ戦えて、どれだけ走れるか」という、もっと根本的なところで差がつきます。

これは感覚論ではありません。サンフレッチェ広島のジュニアユース1次セレクション(2026年度加入)の実施内容には、8人制のゲームとGK専門テストに加えて、50m走がはっきり明記されています。走力は、測られています。

そして、ここに時代の変化が重なります。スポーツ庁の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(令和7年度)によると、小学5年生男子の50m走の全国平均は9.46秒。平成24年度は9.36秒でした。女子は9.77秒で、これは調査開始以来もっとも遅い水準です。1週間の総運動時間が60分未満の子の割合も、増加傾向にあります。

子ども全体の運動能力が落ちているということは、裏を返せば、走れる子・体で戦える子の価値が、相対的に上がっているということです。技術練習に時間を割く前に、走ること、ぶつかること、あきらめずにもう一歩足を出すこと。ここは、いま誰でも差をつけられる場所です。



② 自分のプレーを、説明できるか


私が14歳のとき、年代別代表で一緒だった久保建英に、こう言われたことがあります。

「敵が右から寄せてきているんだから、左足に出さないとダメでしょ」

14歳です。彼は当時から、自分のプレーにも他人のプレーにも根拠を持っていて、それを言葉にして要求できました。私はそれができていませんでした。なんとなくうまくいった、なんとなくうまくいかなかった、で終わっていた。

いま振り返ると、あのとき差がついていたのは技術ではありません。解像度です。

同じ年代で一緒にプレーした選手のなかには、久保建英、菅原由勢、中村敬斗、瀬古歩夢、谷晃生といった、いま日本代表として戦っている選手がいます。彼らに共通していたのは、小学生・中学生の頃から、自分の現在地を俯瞰し、最適解を言葉にし、自分で決断できたことでした。目標を決めて、そこから逆算して、必要なことを積み上げる。それが当たり前にできていた。

ここからは私の解釈です。指導者がセレクションで見ているのは、まさにここだと思っています。JFAはナショナルトレセンU-14の選考について、「選手の潜在的な力と将来性、個性を重視し、日本代表へつながる選手が対象」と説明しています。数値化された基準は公表されていません。「いまの完成度」ではなく「これからどこまで行くか」を見ているからです。

そして、これから伸びるかどうかを短時間で判断する材料は、結局、その子が自分のプレーをどれだけ理解しているかに現れます。

ご家庭でできることは、シンプルです。試合の帰り道に、ダメ出しをしない。代わりに、こう聞いてみてください。

「さっきのあのプレー、なんでそれを選んだの?」

答えられなくても構いません。聞かれ続けた子は、聞かれる前に自分で考えるようになります。



③ 落ちたあと、何をするか


トレセンの仕組みを正確に知っている保護者は、あまり多くありません。

JFAのトレセンは4つの階層になっています。地区・ブロック → 都道府県 → 地域(9地域)→ ナショナル。上に行くほど枠は狭く、ナショナルトレセンU-14はフィールドプレーヤー56名とGK8名です。全国から、この人数です。

大事なのは、トレセンは年度ごとに見直されるということ。一度選ばれたら終わりでもないし、一度落ちたら終わりでもない。これは「上手い子へのご褒美」ではなく、育成の場です。

だから、セレクションやトレセンの選考で本当に効いてくるのは、落ちたあとの数か月です。

何がダメだったのかを自分の言葉で説明できるか。そのうえで、明日から何を変えるかを決められるか。決めたことを続けられるか。私たちが見ている5つの力——言語化力、自発力、習慣化力、修正力、逆算力——のうち、修正力と習慣化力は、まさにここで問われます。

不合格は、その子の能力の判定ではありません。その日その時間に、その指導者が見た印象です。それ以上でも以下でもない。ただし、そのあとどう動くかは、その子自身の力です。



それでも、私はプロになれませんでした

ここまで書いてきた私自身は、セレクションを通り、中学1年で背番号10をつけ、高校3年時には高円宮杯U-18プレミアリーグのチャンピオンシップで鹿島アントラーズユースを2-1で破り、高校年代の日本一になりました。U-15からU-18まで、世代別の日本代表にも選ばれました。

それでもプロにはなれませんでした。

大学で病気をしたことが直接のきっかけです。尿路結石から急性腎不全と診断され、2年近くをリハビリに費やしました。大学4年の10月、メディカルチェックの結果を聞きに行った私は、別室に呼ばれて医師にこう告げられました。「プロになるのは、やめた方がいいと思う」。

ただ、本当の理由は病気ではないと、いまは思っています。

私は「考える」という行為を、長い間サボってきました。そしてそれに気づくのが、遅すぎた。スピードと身体能力だけで抜けていたドリブルや裏抜けが、上のカテゴリーでまったく通じなくなったとき、私は初めて慌てて頭を使い始めました。久保建英が14歳のときにやっていたことを、20歳を過ぎてから始めたわけです。

セレクションに受かることは、ゴールではありません。私は受かりました。日本一にもなりました。それでも届かなかった。



まとめ

セレクションで見られているのは、足元の技術だけではありません。戦えるか走れるか、自分のプレーを説明できるか、そして落ちたあとに何をするか。この3つです。

だから保護者の方にお伝えしたいのは、セレクションの合否に一喜一憂するより、その子が「考える選手」になっているかを見てあげてほしいということです。合否は他人が決めますが、考える習慣は、家庭で育てられます。そしてそれは、サッカーを続けても、続けなくても、その子の人生に残ります。

次の世代には、私と同じ後悔をしてほしくない。それが、私がこの仕事をしている理由のすべてです。


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