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COLUMN

子どもの習い事へのモチベーションを保つコツ|やる気を引き出す関わり方

「習い始めたころは、あんなに目を輝かせていたのに」。サッカーでも、ピアノでも、英語でも——子どもの習い事に付き添う多くの親が、どこかでこのため息をつきます。やる気が続かない我が子を見ていると、「うちの子は飽きっぽいのかな」「向いていないのかな」と不安になるものです。

でも、子どものモチベーションは性格や才能の問題ではありません。やる気がどう生まれ、どう消えていくのかには、心理学の研究で少しずつ明らかになってきた、はっきりとした「仕組み」があります。この記事では、研究結果やトップアスリートの言葉を手がかりに、子どものやる気との上手な付き合い方を、ひとつずつ丁寧に掘り下げていきます。

なぜ子どもの習い事へのモチベーションは下がるのか?

やる気の低下には、よく見られるいくつかの「きっかけ」があります。まずは「先生やチームメイトとの相性」。指導者の言い方が合わなかったり、仲のいい友だちがいなかったりするだけで、子どもの足は重くなります。次に「疲労」。学校、宿題、複数の習い事が重なれば、大人が思う以上に子どもは消耗しています。そして「達成感の欠如」。やってもやっても上達を実感できないと、人は誰でも続ける気力を失います。最後に「レベルが合っていない」。難しすぎても、簡単すぎても、子どもの心は離れていきます。

これらはどの子にも起こりうる、ごく自然なつまずきです。ただ、本当の根っこはもっと深いところにあります。それは、子ども自身が「何のためにこれをやっているのか」という目的を見失っている、という点です。送り迎えをして、月謝を払い、ただ「通わせるだけ」になってしまうと、子どもにとって習い事は“こなすもの”になってしまいます。

この「楽しくなくなる」ことの重みは、データにもはっきり表れています。アメリカでよく引用される調査では、組織的なスポーツに取り組む子どもの約7割が、13歳になるまでにそれをやめてしまうと言われています。そして、やめる理由の第一位は「勝てないから」でも「上達しないから」でもなく、「楽しくなくなったから」でした。

では、その「楽しさ」とは何でできているのでしょうか。ジョージ・ワシントン大学のアマンダ・ヴィセック博士の研究チームは、子ども・親・コーチを対象に「スポーツの何が楽しいのか」を徹底的に調べ、楽しさを構成する81個の要素を洗い出しました。驚くことに、多くの親が大事だと思いがちな「試合に勝つこと」は、81個中なんと40番目。リストの真ん中あたりに沈んでいたのです。トップに来たのは「一生懸命やること」「よいスポーツマンでいること」「前向きに励ましてくれるコーチがいること」——いわば、結果ではなく“取り組みの過程そのもの”でした。

子どもがスポーツを続ける一番の理由は「楽しいから」。そして「勝つこと」は、楽しさを決める81要素のうち40番目にすぎなかった。 ——アマンダ・ヴィセック(ジョージ・ワシントン大学)

つまり、子どものやる気が落ちるのは、子どもの根性が足りないからではありません。「楽しさ=過程の手応え」が、いつのまにか日々の中から失われてしまっているからなのです。

「やらされ」と「やりたい」——やる気の正体を知る

具体的な関わり方に入る前に、やる気の「種類」を知っておくと、対処がぐっと楽になります。

モチベーションには、大きく二つあります。「いい点を取ったらご褒美がもらえる」「やめたら親に怒られる」といった、外側から与えられる動機(外発的動機づけ)。そして「面白いからやる」「もっとうまくなりたいからやる」という、自分の内側から湧く動機(内発的動機づけ)です。

心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「自己決定理論」によれば、人が内側からやる気を持ち続けるには、三つの欲求が満たされている必要があります。「自分で選んでいる」という自律性、「やればできる」という有能感、「人とつながっている」という関係性の三つです。

子どものやる気が落ちるとき、たいていこのどれかが欠けています。親や指導者にすべて決められ、できないところばかり指摘され、ただ「通わされている」状態。これでは外発的動機しか働かず、やる気はやがて尽きます。逆に言えば、この三つを満たす関わり方さえできれば、子どもは自分の力で意欲を立て直していけるのです。ここから、その具体的な関わり方を見ていきましょう。

保護者ができる!子どものやる気を引き出す「関わり方」のポイント

やる気は「出しなさい」と言って出るものではありません。けれど、親の関わり方を少し変えるだけで、子どもの内側から自然と意欲が立ち上がってきます。今日から実践できる三つのポイントを紹介します。

結果ではなく「頑張っている過程」を具体的に褒める

「100点すごいね」「試合に勝ってえらい」。結果を褒めるのは簡単です。けれど、結果だけを褒め続けると、子どもは思わぬ落とし穴にはまります。

スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授は、子どもたちを対象にした有名な実験で、これを明らかにしました。あるグループには「頭がいいね(能力)」と褒め、別のグループには「よく頑張ったね(努力)」と褒める。その後に難しい課題を出すと、「能力」を褒められた子たちは失敗を恐れて簡単な問題を選び、成績も落ちていきました。一方「努力」を褒められた子たちは、難しい課題にすすんで挑戦し、成績も伸びたのです。

能力を褒められた子は「できない自分=ダメな自分」と感じ、挑戦を避けるようになる。過程を褒められた子は「頑張れば伸びる」と信じ、失敗を学びのチャンスととらえる。だからこそ、かける言葉は「ゴールを決めてすごい」ではなく、「苦手なところを何度もやり直していたね」「自分から練習を工夫していたね」。結果の手前にある努力や工夫に、具体的に光を当ててあげることが大切です。

目標を細分化し、小さな「成功体験」を積み重ねる

「レギュラーになる」「大会で優勝する」。大きな目標は、子どもにとってときに遠すぎて、かえってやる気を奪います。ゴールの見えないマラソンを走り続けるのは、大人でもつらいものです。ここで効くのが、自己決定理論でいう「有能感(やればできるという手応え)」です。大きな目標を、今日・明日で達成できるサイズまで小さく刻んであげる。「今日はリフティングを5回多く」「相手の目を見て挨拶する」。この一つひとつをクリアするたびに、子どもの中に「自分はできる」という感覚が積み上がっていきます。

小さな成功体験の積み重ねは、派手ではありません。けれど、折れない意欲をつくる土台は、いつもこの地味な「できた」の連続の上にできあがります。大きな花火を一発打ち上げるより、小さな灯りを毎日ともすほうが、火は長く消えないのです。

他人との比較ではなく「過去の自分」との成長を比べる

「〇〇くんはもうできるのに」。つい口をついて出る他人との比較は、子どもの自信を静かに削っていきます。サッカーのように仲間と一緒にやる習い事では、どうしても周りと比べたくなりますが、比較の相手は常に「過去のその子自身」にしてあげてください。

「半年前はまったくできなかったこれが、今はできるようになったね」。昨日より一歩でも前に進んでいる事実に目を向けてもらえた子どもは、自分のペースで伸びることに安心し、成長そのものを楽しめるようになります。ヴィセックの研究が示した「楽しさは過程に宿る」という事実とも、これはぴったり重なります。比べる相手を変えるだけで、同じ出来事が「ダメ出し」から「成長の確認」へと姿を変えるのです。

やる気を「仕組み」で支える——見えない成長に光を当てる

ここまでの関わり方は、とても大切です。ただ、「褒めよう」「比べないでおこう」と頭でわかっていても、毎日となると親も疲れますし、ムラも出ます。やる気を“気合い”や“その日の機嫌”だけに頼らず、「仕組み」で支える視点を持つと、ぐっと続けやすくなります。

成長を「記録」して、自分の伸びを見えるようにする

サッカーのようなスポーツでも、勉強でも、点数や勝敗という“結果”はわかりやすい一方で、その手前にある成長は目に見えにくいものです。だからこそ子どもは「頑張っているのに伸びている実感がない」と感じ、やる気を失います。

そこで有効なのが、成長を「記録」して見えるようにすることです。練習ノートに「今日できるようになったこと」を一行だけ書く。スマホで月に一度、同じ練習の動画を撮って見比べる。こうした小さな記録が積み重なると、子どもは自分の伸びを“自分の目で”確認できます。人は、見えない努力は続けにくいものですが、見える成長には前のめりになれるのです。

「なぜやるのか」を一緒に考え、「やらされ感」をなくす

モチベーションが続かない最大の理由は、「やらされている」という感覚です。これを溶かすには、「なぜこの練習が必要なのか」を子ども自身の言葉で考える時間をつくること。

「この練習って、試合のどの場面で役に立つと思う?」と問いかけてみる。自分で目標を立て、やることを決め、振り返る。このサイクルを子ども自身の手で回す経験を重ねるうちに、「やらされる習い事」が「自分で選んだ習い事」に変わっていきます。ここで身につく力は、サッカーに限らず、どんな習い事や勉強にも応用できる“自立の土台”になります。

子どもが「やめたい」と言った時、親はどう向き合うべき?

どれだけ関わり方を工夫しても、子どもが「もうやめたい」と言い出す日は来るかもしれません。多くの親はここで動揺し、「ここまで続けたのに」「簡単にやめちゃダメ」とつい感情的に返してしまいます。

けれど、まず必要なのは叱ることではなく、聴くことです。「どうしてそう思ったの?」と、やめたいと感じた背景にじっくり耳を傾けてみてください。原因が友だち関係なのか、レベルが合っていないのか、それとも一時的に疲れているだけなのか。理由がわかれば、打てる手はまるで変わってきます。一時的な疲れなら少し休めばいいし、環境が合わないなら先生やチームに相談する道もあります。

ここで思い出したいのが、自己決定理論の「自律性」です。最終的に「続ける」「休む」「やめる」を子ども自身が選んだと感じられること。その納得感こそが、たとえ続ける場合でも、次のやる気につながります。親が結論を押しつけた“やらされ”の継続は、長くは持ちません。「あなたが決めていい」と委ねられた経験は、それ自体が子どもを一歩おとなにします。

まとめ

子どものモチベーションは、根性や気合いで支えるものではありません。「楽しさは過程に宿る」「やる気は自律性・有能感・関係性から生まれる」「結果より過程を褒める」「小さなできたを積み重ねる」——研究が教えてくれるのは、どれも特別なことではなく、毎日の声かけの中で実践できる小さな工夫ばかりです。

そして習い事を通じて育つ「自分で考え、自分で続ける力」は、サッカーや勉強の枠を超えて、子どもの一生を支える財産になります。やる気が落ちて見える今この瞬間も、関わり方ひとつで、子どもはまた自分の足で走り出せます。親にできるのは、火を無理やりつけることではなく、消えない火種をそっと守ってあげることなのかもしれません。

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